ナミビア東部に広がるカラハリ砂漠は乾燥したナミビアの中でも最も乾燥している地域であるが、ここはその昔バンツー系黒人に追いやられたサン族(ブッシュマン)が、生活の地として選んだ場所である。世界中で人気を得た映画"ブッシュマン"の主演者であり、来日したこともあるニカウ氏は現在もこの地に住んでいる。映画の影響で狩猟のプロフェッショナルというイメージがあるサン族であるが、実際は狩りで大きな動物が獲れることはまれで、小動物や鳥の雛、木の実などを主に食している。近年は快適な西洋文化の波を受け、自然と共存していく独特の生活を放棄してしまったサン族が多く、この最果ての地でも太古と変わらない生活をしているサン族は全体の1%程度といわれている。

現在、ナミビアのサン族は大きな問題を抱えている。昔ながらの生活を完全に捨て、酒に溺れ、文化を次世代に伝えていくことが難しくなりつつあるのだ。近年、サン族の多くは他の強大な黒人部族の使用人として働いているが、報償は現金ではなく、酒で支払われる。ヘレロ等の部族がサン族達を自分たちより劣る部族として使用しており、彼らを酒浸りにしようとしているのだ。やがてサン族は酒目当てに働くようになり、更に地位を落としていく。黒人間での部族差別である。この状況を重く見た何人かの白人達により、サン族にきちんとした教育を与え、昔ながらの生活も伝えていこうという努力が始められている。
